建設業

建設業の特徴と原価計算の目的

ROITパートナーズが得意としている建設業会計の情報提供を今後定期的に行っていきます。今回は、建設業の特徴とその特徴を踏まえた原価管理の目的について考えていきます。

建設業の特徴

建設業では、原価管理を工事番号(ジョブ、プロジェクト)ごとに行っており、いわゆる見込生産である自動車産業、家電、薬品などの製造業と違う特徴がありますので、まずはその特徴を整理していきましょう。

① 受注請負生産業である

製品や、サービスの生産方式には、家電製品、自動車、薬品、食品などの見込生産と大型船舶、重機械などの個別受注生産とがあります。建設業は、後者の典型的な個別受注生産の請負生産となります。原価管理としては、個々の工事番号別に原価を集計する個別原価計算が採用されています。

② 生産期間(工事期間)が長い

個別受注生産型産業は大量生産方式を採用できないため、比較的生産期間が長いものが多く、受注から完成引渡しまで、通常の会計期間(1年間)を超える期間を持つプロジェクト、工事を抱える企業もあります。このため、財務会計上では、工事進行基準という特別な会計処理方法で計上する方式が採用されます。工事進行基準の採用が、進捗率による収支管理の必要性、間接費や共通費の配賦が期間損益に影響を及ぼし、原価管理を複雑化する原因の一つになっています。

③ 生産現場が移動する

建設業では、生産現場は常に一箇所ではなく移動的であり、場合によっては同時に複数の生産現場を保持することもあります。製品製造業では、工場共通費が配賦基準によって処理されることがほとんどありませんが、建設業では、生産現場の共通費をどのように配賦するかは非常に重要なテーマの一つになります。

④ 常置的な固定資産が少ない

生産現場が移動的であるため、生産に使用される機械装置等の固定資産も同じ性格を持ちます。工事原価を計算する際に、単純な固定資産の減価償却計算では、完成した工事に使われた費用なのか、未成の工事に使われた費用なのか区別することは困難です。そこで建設業では、損料計算の方法を用いて原価計算が行われます。

⑤ 工事種類および作業単位が多様であること

1つの請負工事を完成させるため、直接的な工事作業だけでも土木、コンクリート、鉄筋工事等、20種類以上の工事種類から構成されるだけでなく、その作業単位も様々です。一般の原価計算で要求されることが少ない工事種類別原価計算などが必要になります。

⑥ 外注の依存度が大きい

⑤で記載のとおり、1つの工事を完成させるために、様々な専門的な工事や作業が必要となりそれぞれが個別の生産物として製造されるため、専門的な外注業者を多く必要とします。いわゆるゼネコン構造はこのために作られた仕組みといえます。一般的な原価計算では、原価を材料費、労務費、経費の3つに区分していますが、建設業原価計算では、材料費、労務費、外注費、経費の4区分が採用されています。

⑦ 公共工事が多い

建設業では、政府、地方公共団体、公益法人等である公共工事の比率が高いことも特徴の一つです。公共工事では、入札制度があるため「積算」という方法により、事前の原価計算や原価管理を重視する傾向が強いです。建設業では、事前の原価計算が重視されるため、実行予算通りに着地する原価管理が重要になります。

建設業の原価計算の目的

上記7つの特徴から、建設業の原価管理の目的として大きく「適正な工事価格の算定」の対外的な目的と「経営管理」の内部的な目的の2つに分類されます。

適正な工事価格の算定

① ディスクロージャー財務諸表作成の目的

まず、挙げられるのが会社法、金融商品取引法、税法、建設業法に基づく財務諸表の開示制度への対応です。いずれの制度も完成工事原価及び未成工事原価に関する原価計算は建設業企業にとっては必要不可欠であり、財務諸表作成に必要な原価を適正に見積もる必要があります。

② 受注関係書類作成目的

受注請負産業であるため、受注のために必要な金額を事前に見積もる必要がります。これらは「積算」という方法で見積もられ、顧客に対し見積り等の根拠資料として原価計算が必要となります。

③ 関係官庁提出書類作成目的

建設業は公共工事と関係が深いため、建設業特有の調査資料等の報告が要求されます。例えば、「公共工事労務費調査」等がありますが、書類を作成する際は、報告が必要な単位で労務費原価を算出する必要があります。

経営管理

① 個別工事原価管理目的

建設業の原価管理は個別工事単位で実施されます。先でも記載しましたが、原価の発生場所が工事現場で、その場所が有期期間で移動し、各現場は個々の事情を持つ単品生産であるためです。建設業の個別原価管理とは、工事別の実行予算を作成し、この実行予算に従って日常発生する作業をコントロールし、必要に応じてアクションプランを策定・実行し、工事完成後に予算と実績の差異分析を行い差異の原因について、経営層に報告し、経営活動を改善していく一連の作業になります。

② 全社的利益管理目的

企業経営は、継続的な企業価値向上の一連の作業であり、そのために経営目標、経営計画の策定が必要になります。経営計画には、長期、中期、短期と各期間に応じた利益計画の算定が重要になりますが、利益計画を作成する上で、目標工事高及び工事原価を予定計算するため、原価計算が必要不可欠になります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?個別原価計算が建設業で必要になる理由と原価計算の目的について整理してみました。実行予算策定、共通費配賦計算、工事進行基準、予実対比などこれら複雑な原価計算を適正に行うため、IT基盤の構築が必要不可欠になります。 今後も定期的に建設業会計に関する情報を定期的に発信していきますので、どうぞよろしくおねがいします。

次回予告

次回は、原価計算の方法について深く掘り下げ、システム構築時のポイントについても合わせて発信していきます。

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