建築業

建設業の実行予算と原価管理

建設業会計について、今回は実行予算と原価管理に関して整理していきます。

実行予算の目的

実行予算とは、建設業の施工管理上の計画を計数化したものになります。工事受注後にその工事をどのような予算計画で進めていくかを工事着手前に数値的に計画します。

実行予算作成の主な目的として、①利益目標の設定と利益管理、②実績比較による原価管理、③工事実行責任の明確化の3つが挙げられます。

  1. 利益目標の設定と利益管理
    建設業にとって、会社全体の利益は各工事の利益の積み上げによってもたらされます。実行予算は、建設業の利益計画のスタートになります。また、工事現場作業場所では、作成した実行予算の粗利目標達成するために施工作業を進めていきます。工事が進捗してくると、工事環境、購買条件、施工方法などが変化し、請負額の増額交渉が必要になることもありますが、増額交渉の基礎資料としても実行予算は重要です。
  1. 実績比較による原価管理
    工事が施工されると実際原価が発生してきますが、実行予算における予定原価をベースラインとして実際原価発生額をコントロールしていきます。その際に、実行予算と実際発生額の際が数値的にどれぐらいあり、その原因は何かを突き止めて、アクションプランを講じていくことで、工事利益を確保します。
  1. 工事実行責任の明確化
    工事現場作業場所の作業所長は、実行予算の立案・承認に深くかかわる結果、工事原価の管理責任及び利益責任を負います。また、実行予算は、工事の施工について各工種・工程等の区分が分かれており、各区分の責任者を明確化する機能があります。

実行予算の策定手順

実行予算の策定は以下の手順で行われます。建設業の利益計画の基礎資料となるため、各企業によって作成、承認のプロセスを構築することが重要です。

  1. 予算書作成チームを編成する。
  2. 受注した工事の特徴を整理する。
  3. 対外的「見積書」の特殊事情を抽出するだけでなく、実行予算との一般的相違点を明確にしておく。
  4. 「見積書」からの組み換えをする。
  5. 実行予算案を関係部署に回付し、必要な調整をする。
  6. 実行予算の最終的な審査、決裁をする。

実行予算は、工種別原価のみによって編成することも可能ですが、実績との差異分析等のコントロールに役立つように、原価4要素によっても設定しておくと有効です。数値の算出根拠となった数量や単価は各明細書で管理することを前提に総括表として工種別原価と原価4要素を一覧に示すには次の様式が参考になります。

実行予算総括表テンプレート

実行予算総括表テンプレートダウンロード(PDF)

実行予算に基づく原価管理

実行予算作成後は、工事利益確保のために予実対比による原価管理が必要です。重要なのは、工事発注者の要望を満たしつつ施工の品質を維持しながら、いかに原価発生をコントロールして利益確保するかです。

原価管理の流れとして以下の手順で実施します。このサイクルを繰り返して、工事発注者の満足度を高めてかつ会社の利益を確保していきます。

  1. 実行予算に基づく各種発注
  2. 発注先に対する施工実施の管理・実績把握
  3. 施工実績に対する支払い
  4. 実際原価発生額の把握
  5. 予算と実績の対比および差異分析
  6. 施工改善などの対応策の立案・実行
  7. 必要に応じて実行予算の変更

特に重要で難しいのは、「5.予算と実績の対比および差異分析」です。策定した実行予算と同じ粒度で実績値を集計してくる仕組みが必要です。また、同じ区分で比較したとしてもその原因について、現場担当者、外部発注先への確認により正確に分析する必要があります。原因分析が不十分だと効果的な対策ができず、改善の効果が小さくなってしまします。

また、実行予算と同じ粒度で実績値を集計してくる場合には、ITを有効活用し、自動的に集計してくる仕組みを構築することで、集計作業の効率化と正確性の確保が可能です。

工事実行予算管理表テンプレート

工事実行予算管理表テンプレートダウンロード(PDF)

まとめ

いかがでしたでしょうか?実行予算策定は、建設業企業の利益計画の元となる重要な作業になります。実行予算策定のルールを定めて質の高い計画を作り、実績を実行予算と同じ粒度でモニタリングする仕組みを構築することが重要です。モニタリングの仕組みを構築したうえで予実かい離の原因分析をして次のアクションにつなげていき、企業利益を確保していくことが必要になってきます。

次回予告

次回は、建設業における管理会計について発信していきます。

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