Dynamics 365

プロジェクト管理におけるCRM活用法

開発プロジェクトにおけるコミュニケーションは、開発に携わる技術者どうしで行われることが多くなります。また顧客との打ち合わせに出席する人はプロジェクトマネージャーや営業担当など、限られる場合が多いです。このため、プロジェクト管理とCRMは関係ないと思われる方も、いるかもしれません。

しかしプロジェクト期間中における顧客対応の良し悪しは、顧客満足度にとどまりません。納品したITシステムの評価にも影響します。このため、CRMという観点を取り入れた運営も重要です。

本記事ではまず、プロジェクト管理とCRMが関連する理由を解説します。あわせてCRMを活用したプロジェクト管理が行えるサービスとして、Dynamics365 for Project Service Automation(以下、Dynamics365 for PSAと略)を紹介します。

プロジェクト管理とCRMが関連する理由

導入文で解説した通り、プロジェクト管理とCRMには関連があります。従って直接顧客と対面することのない技術者であっても、顧客のことを念頭に置いて開発に携わることが求められます。
ここでは3つの主な理由を取り上げ、解説していきます。

顧客企業は予定通りの納期と約束した品質で納品されるか、注視している

ITシステムは、顧客企業がまとまった金額をかけて開発を依頼するものです。従ってどの企業においても、気軽に支出できる金額ではありません。またITシステムの納期にあわせて、ビジネスルールの改訂を行う場合もあります。このような事情があるため、顧客企業は発注したITシステムが予定通りの納期で、かつ約束した品質で納品されるかを注視しています。

従って適切なタイミングで顧客に報告することは、顧客満足の向上につながります。理想は顧客から「御社はこちらが何も言わなくても、必要な報告を頂けるので助かる」と言われることです。

これを実現するためには、いつ、どのような報告を行ったのかをCRMで管理することが求められます。加えて「御社は報告される内容が人により異なる」などという指摘を防ぐためには、顧客に報告した情報を社内で共有することも必要です。

顧客に説明する際には、プロジェクト状況の把握が不可欠

プロジェクトサービス企業から顧客に対してなんらかの報告をする場合、その内容は顧客側の担当者だけでなく、その上司も納得できる内容でなければなりません。

従って直接開発に携わらない営業担当者であっても、顧客に説明する際にはプロジェクトの現状を把握することが条件となります。進捗に遅れている場合は、実現可能なリカバリープランの提示も必要となる場合が多いでしょう。顧客の事情とプロジェクトの現状を総合的に考えた上で適切な説明を行うには、顧客の要望や特徴、問い合わせ履歴などの把握も欠かせません。このためには、CRMの活用が役立ちます。

納品物は同じでも、顧客とのコミュニケーションが良好ならば顧客満足度は高くなる

技術者のなかには、「仕様書通りに開発し、納期も守ったのだから、十分満足してもらえるはずだ」と思う方もいるかもしれません。しかしITシステムといえども、製品の満足度にはコミュニケーションの良し悪しも含まれます。

仮に次回の発注をしたいと思ったとき、皆さまはどちらの企業に発注しようと思うでしょうか。

  • 受注後何の連絡もなく、納期近くになって「ご注文のシステムを納品いたします」と連絡してくる企業
  • 受注後も進捗状況の報告が定期的に行われ、かつ不明点があった際は顧客と確認しながらシステム開発を進める企業

多くの方は、後者の企業に発注したいと思うでしょう。なぜなら後者は密接にコミュニケーションを取り、顧客を置き去りにしないという姿勢で開発を進めているからです。開発終了後にITシステムを使うのはほかでもない顧客ですから、顧客の声に耳を傾けることはきわめて重要となります。またヒアリングした顧客の声を社内に周知させるためには、CRMを活用した情報共有が有効です。

Dynamics365 for PSAを利用するメリット

CRMを活用したプロジェクト管理を進めるためには、Dynamics365 for PSAの利用が適しています。その理由は主に4つありますから、それぞれの理由について解説します。

1つのシステムで営業管理とプロジェクト管理が同時に行える

Dynamics365 for PSAは、営業管理とプロジェクト管理が同一のシステムに統合されていることが主な特徴となっています。従ってデータの連携も容易です。また適切な権限を与えることにより、技術者でも商談の段階で要望された内容を知ることができますから、システム開発に役立てることができます。

これは営業管理とプロジェクト管理で別々のシステムを使っている企業では、簡単に行えることではありません。従ってDynamics365 for PSAを使うことにより営業部門と開発部門それぞれの連携を深め、顧客満足度の高いシステムの作成につなげることができます。

最適な要員配置が可能

Dynamics365 for PSAでは、プロジェクトに必要なポジションを指定すると、該当するエンジニアを検索して候補を表示することが可能です。同時にエンジニアの空き時間も、週ごとに表示できます。これにより、プロジェクトの条件に合わせて要員をアサインすることができ、最適な要員配置につなげることができます。

類似の見積書をすぐに探し出せ、精度の高い見積りを作成できる

プロジェクト企業で利益をあげるためには、作業項目と金額などを検討した上で見積書を作成することが必要です。精度の高い見積書を作成するには、類似したすでに作成済みの見積書が参考となります。しかしファイルサーバーに保管している場合は多くのファイルのなかに埋もれてしまっている場合も多く、時間をかけて探し出さなければなりません。

一方でDynamics365 for PSAならば、顧客マスタから関連する見積書をすぐに探し出せます。また他社で類似の案件を見積もった場合でも、どの顧客の案件かがわかれば簡単に探せます。これにより短時間で精度の高い見積書をつくり、顧客に提示することが可能です。

開発状況を営業もチェックし、顧客に説明できる

Dynamics365 for PSAでは適切なアクセス権限を与えることにより、営業担当者もプロジェクトの進捗状況を確認できます。たとえば作業工数や作業項目が増えているかどうかといったチェックが可能です。

従ってプロジェクトマネージャーから何も連絡がなくても、不明な点を見つけしだい説明を求めることができます。また営業担当者であってもプロジェクト全体の状況を把握した上で顧客に説明できるため、顧客の納得度も高くなります。さらに状況次第では、追加金額の交渉を始めることも可能です。

Dynamics365 for PSAに搭載されている主な機能

ここまで解説した通り、Dynamics365 for PSAはプロジェクト管理の際にもCRMを活用できる機能を搭載しています。ここでは、CRMの活用を実現する主な機能を紹介します。

見積り段階の連携機能

あらかじめDynamics365 for PSAに適切な権限を与えておけば、開発部門は「営業が入力したプロジェクト概要」にアクセスして、そのまま見積りの詳細情報を入力できます。開発部門が持っているプロジェクトのスケジュールをExcelファイルで送り、営業部門で入力し直すといった手間が省けるため、スムーズな連携ができます。
実際に開発部門で入力する情報は、以下の通りです。

  • WBSの作成(タスクを作成し、工数・開始日・終了日・必要なエンジニアのレベルを入力)
  • 想定される経費情報

また受注後は入力した情報をそのままプロジェクト管理で使えますから、効率的な業務の遂行に役立ちます。

プロジェクト進行中における主な機能

プロジェクトの進行中において、CRMに関連する機能は以下の通りとなります。

  • プロジェクト期間、見積もり原価の表示
  • プロジェクト計画やWBS作成
  • プロジェクト状況の把握、およびコスト消費率や進行状況の表示(数字とグラフで表示が可能)
  • メンバーのアサイン状況の確認(しかるべきレベルのエンジニアが業務に携わっているのか、という観点)

これらの情報は、権限を適切に付与することで営業担当者でも確認できます。このことは開発部門とのコミュニケーションを効率化し、顧客対応のスピード化とレベルアップに役立ちます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?一見CRMとは無縁に見えるプロジェクト管理も、プロジェクトの成功には重要ということがおわかり頂けたと思います。CRMとプロジェクト管理の連携には、Dynamics365 for PSAが適しています。より顧客にフィットしたシステム開発を行うためにも、ぜひ導入をご検討ください。

Dynamics365 for Project Service Automationとは?デジタルトランスフォーメーションとは何か?