Power Platform

PowerAppsでのアプリ作成を成功させるポイント

少し前まで、業務システムの開発といえばシステム担当者や社外のIT企業といった、ITエンジニアによる開発に限られていました。それ以外は、仕様があらかじめ決まっているパッケージを利用するほかなかったわけです。しかし2016年にMicrosoftからPowerAppsがリリースされ、ITエンジニアでなくても手軽に業務アプリを作成できるようになりました。

もっともいくら簡単に業務アプリを作成できるといっても、人間が行わなければならない業務はあります。今回はPowerAppsのアプリ作成を成功させるために、業務担当者が行うべき業務を考えます。

PowerAppsで、手軽に業務アプリを作成できる

冒頭で解説したとおり、PowerAppsは業務担当者でも手軽に業務アプリを作成できる開発ツールです。最大の特徴として、プログラミング言語の習得が不要という点があげられます。代わりに、以下の操作で業務アプリを作成できます。

  • 画面上にあるアイテムをドラッグ&ドロップする
  • 関数はExcelを使う要領で入力できる

業務アプリが必要になったら業務部門で迅速に作成できるため、IT部門や他社に依頼した場合にどうしても発生する「待つ日数」を大きく削減できるメリットがあります。加えてアプリの作成に関わる人数も少なくてすむため、仕様の認識がずれるリスクを減らせるメリットも見逃せません。

仕様をきちんと確定することが重要なことは変わらない

PowerAppsは優秀な開発ツールですが、業務におけるプロセスやルールなど「仕様」と呼べるものは、業務に関わる方が決めなければなりません。簡単に作成できるからといって仕様の決定をおざなりにすると、業務のやり直しなど二度手間が発生し、業務を大きく停滞させる結果となりかねないため注意が必要です。

ここでは上記の点を含めて、あらかじめ仕様を決めておく必要性を4点取り上げ、解説していきます。

・PowerAppsで実現したい機能そのものは、人間が決める必要がある

PowerAppsは業務ツールであり、それ自身もプログラムの1つです。業務のコンサルティング機能は搭載されていないため、最適な業務の流れを自ら考えたり、アドバイスしてくれたりはしません。あくまでも決められた仕様に沿って、データ処理を行うことが役割です。

そのためPowerAppsを使ってどのような処理をさせるかという点は、業務部門の方で決める必要があります。これはいわゆる「業務アプリの仕様」に関する部分であり、この作業までPowerAppsに丸投げすることはできません。

・簡単だからといって行き当たりばったりで作ると失敗しやすい

PowerAppsは簡単に業務アプリを作成できることが魅力です。このためトライ&エラーを繰り返して品質を上げることも1つの方法です。しかし行き当たりばったりで作ると「希望するデータが全然出てこない」など、失敗につながる原因となります。

そもそも簡単に作成できるからといって、なんとなく作ってもよいものができるわけではありません。業務アプリは正しい業務プロセスに基づいて作成した場合のみ、正しいデータが得られるものです。このため簡単な業務アプリでも、作成する前には事前に業務フローやルール、データの流れを事前に把握することが必須です。

・仕様があいまいなまま作成すると、かえって無駄な時間を消費しかねない

同様に、仕様があいまいなまま作成することも失敗の原因となります。たとえば何通りもの解釈ができる文言で仕様が決められている場合は、求めるものと異なる業務アプリやデータを生みがちです。また頻繁に仕様が変わるとその都度業務アプリを作り直さなければならず、無駄な時間を消費してしまいます。これでは業務効率化に貢献できません。

もちろん使っていくうちに出てくる改善点を反映し、仕様を変えることはあってしかるべきです。しかし業務アプリを作るならば、業務に耐えうる「完成品」を作る必要があります。このため思いつきで作成を始めるべきではありません。その代わりにある程度仕様を固めておくと、最短の時間で業務アプリを作成できます。

・「自ら責任をもって作る」という意識が必要

業務部門自らがアプリを作成することは、すべての責任は自らの部門で負うことを意味します。IT部門や他社に依頼した場合と異なり、責任の所在が明確になるものの、業務部門の責任は重くなります。そのため簡単なアプリであっても「自ら責任をもってアプリを作る」という当事者意識が欠かせません。

アプリの作成を成功させるポイント

PowerAppsによるアプリの作成を成功させるためには、3つのポイントがあります。それぞれについて、理由を含めて解説していきます。

・業務で処理されるプロセスやルールを理解しておく

さきに解説したとおり、どんなに優秀な開発ツールでも業務そのものの仕様は決められません。そもそも業務の仕様は、現場で携わっている方が把握しておくべきものです。このためアプリの作成対象となる業務でどのような処理が行われるべきか、事前にプロセスやルールをしっかり理解していることが求められます。

もしプロセスやルールがよくわからないままアプリの作成を始めようとしても、どう作ればよいかわからず、途方に暮れることになります。わからない点は面倒でも先に調べ、理解しておきましょう。

・どの情報が欲しいか明確にする

アプリの作成を成功に導くためには、どのような情報が欲しいか明確にすることも欠かせません。これは出力されるデータに何を求めるかによって、入力元となるデータも変わるためです。

最も避けなければならないことは、「とりあえず出せるものは出す」という考えです。出力項目が多くなるとアプリを作成する手間や処理内容が増えるだけでなく、不具合が起きるリスクも高まります。安全かつ簡単にアプリを作成するなら必要な項目だけを表示するなど、求める情報をあらかじめ明確にすることが求められます。

・法令で定められた計算式に沿っているかチェックする

業務によっては、計算式が法令で定められている場合があります。この場合はあらかじめ法令の内容を十分に理解した上で、法令を遵守するように業務アプリを作る必要があります。万が一計算式に誤りがあると多方面に悪影響を及ぼしますから、作成後は慎重にチェックしましょう。

簡単なアプリでも必ずテストを行う

業務で使うアプリは、仕様通りに不具合なく動作しなければなりません。このため簡単なアプリでも、作成した後にはテストを行い、仕様どおりに動作するかチェックが必要です。

一方でデータを使ったチェックについては項目を絞ることで、短時間でも効果的なテストを行うことが可能です。どのような観点で行えばよいか、2つのポイントを解説します。

・正常なデータと異常なデータは必ずチェックする

多くの業務では、入力可能なデータに何らかの制約を設けています。たとえば、以下のようなケースがあげられます。

  • 当月の経費は、翌月5日まで請求可能
  • 金額にはマイナスの値は入らない

このため正常なデータは問題なく受け付けることに加えて、異常なデータはその旨のメッセージを表示して処理を行わないなどのチェックが求められます。入力するデータのパターンを何通りか考えた上で、正しく動作するか確認しましょう。

・境界値は入念にチェックする

業務によっては、入力された値により処理が変わる場合もあります。たとえば3万円までの領収書は課長までの承認でよいところ、3万円を超えると部長の承認が必要といった例があげられます。

このような場合は30,000円と30,001円で異なる動作をするか、チェックする必要があります。加えて「以下」と「未満」、「以上」と「超える」は境界値が異なりますから、この観点でのチェックも必要です。上記のケースでは29,999円と30,000円は同じ動作となるべきですから、意図した通りに動作するかチェックすることも求められます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?PowerAppsでアプリの作成そのものは手軽になりましたが、業務そのものをどう進めるか?という「仕様」の部分は人間が決めなければなりません。仕様の確定は、アプリの出来そのものを決める最も重要なポイントです。そのため十分な検討を行い、しっかり決めてからアプリを作り始めることが短時間で完成させるコツといえます。

きちんと準備を行えば、PowerAppsは大変便利な開発ツールです。あわせて「PowerAppsを用いた業務アプリケーション作成のメリット」記事も、ぜひご参照ください。

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