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中堅・中小企業が2025年の崖を越える為に~ オーダーメイド型システムからクラウドサービスへ変える際のメリットと注意点

皆さまの所属する企業では、貴社の業務にフィットした内容でつくられた「オーダーメイド型システム」が稼働していることも多いかもしれません。経済産業省が2018年9月7日に公表した「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開」では、日本企業が抱えるITの構造問題が記載されています。中堅・中小企業のみなさまのなかには、このままオーダーメイド型システムを使い続けることに対して不安を感じている方もいるかもしれません。

このため、「次期システムはクラウドサービス」とお考えの企業様も多いことでしょう。本記事では、クラウドサービスのメリットと業務改善につなげる為の注意点を整理し、「やっぱりクラウドサービスはダメだ」とならないために押さえておきたいポイントについて解説します。

オーダーメイド型システムとクラウドサービスは、大きく異なる

ひとくちに業務システムといっても、開発方法は3種類に分かれます。開発方法の違いは、以下にあげるサービス内容の違いに結びつきます。

  • オーダーメイド型システム:発注元企業に特化したシステム。期間や予算が豊富ならば、求められる機能のほとんどを実現できる
  • パッケージ型システム:会計や人事など、業務ごとによく使われる機能を運営企業があらかじめまとめておき、提供するシステム。インストールが必要で、アドオンやカスタマイズが可能な場合がある。
  • クラウドサービス:システムのテンプレートを運営会社で作成しておき、申込みを受けると速やかにインターネット経由で使えるようにするシステム。企業独自の機能を使いたい場合はアドオンなども可能な場合があるが、制約を受ける。

企業においては、オーダーメイド型システムを使っている場合も多いでしょう。上記の通り、オーダーメイド型システムとクラウドサービスは大きく異なります。クラウドサービスを検討される際は、まずこのことに留意する必要があります。

クラウドサービスの良いところ

それでは、クラウドサービスを導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは主な5つのメリットを取り上げ、それぞれについて解説していきます。

サーバーを用意しなくてもよいためすぐに設定を始められ、初期費用も下げられる

クラウドサービスは、申込みが終わるとすぐに設定作業を始められることが特徴です。これはオーダーメイド型サービスにありがちな、「サーバーが用意できるまで、しばらく待たないといけない」こととは対照的です。またサーバーを用意しなくてよいため、数百万円以上の単位で初期費用をおさえられる場合も少なくありません。

また容量が不足しても迅速に追加できますから、最低限の容量で始めることが可能です。このためクラウドサービスは低い初期費用で、スピーディーに使い始められることがメリットです。

不要になったら、契約を終了することでやめられる

クラウドサービスは、利用を終了したいときにもメリットがあります。いつでも解約可能な契約ならば、契約を終了させることで使い終えることができます。またサーバーを撤去する手間や、処分費用などもかかりません。

このようにサーバーを保有する場合と比べて、身軽にシステムを切り替えられることはメリットといえるでしょう。

トラブルが起きてもすぐに対応可能。修正プログラムの適用もおまかせ

クラウドサービスの場合、サーバーは運営会社の管理下にあります。したがってトラブルが発生しても貴社にかけつける必要がなく、運営会社の職員が速やかに対応できます。また業務システムにはOSやデータベースなどへ修正プログラムを適用することが欠かせませんが、この適用も運営会社で行います。

貴社の知らない間に、トラブルの発生から復旧まで終わっているケースも多いかもしれません。いちいち言わなくても責任をもって対応してもらえることは、メリットといえるでしょう。

法令改正への対応も万全

業務のなかには会計や給与システムなど、法令に準拠した取扱いが必要な場合があります。法令は頻繁に変わっていますから、本業をこなしながらチェックし続けることは大変です。

この点クラウドサービスなら、運営会社が法令改正の情報をチェックし、しかるべき時期に適用してくれますから手間がいりません。法令改正への対応が万全なことも、クラウドサービスのメリットといえるでしょう。

ハードウェアのサポート終了や、技術者不足により開発が遅れる心配がいらない

オーダーメイド型システムで使われているサーバーは、いつか使えなくなるときが来ます。このため、どこかのタイミングでリプレースの実施が不可欠です。同時にシステム更新も行いたいところですが、IT業界は人手不足が深刻な業界であることを忘れてはなりません。

冒頭で紹介した「2025年の崖」でも触れられている通り、技術者の不足は今後ますます深刻化することが見込まれています。したがってオーダーメイド型システムを使い続ける選択をした場合、貴社が求める時期に「ハードウェアのリプレースを含めたシステム更新」が行えないリスクがあります。

一方でクラウドサービスは、あらかじめ業務に必要な機能が用意された形で提供されます。このためアドオンなどを必要としなければ、申し込んで設定を行うことで使い始めることができるため、IT技術者を必要としません。加えてハードウェアも準備しなくてよいため、サポート終了や技術者不足を気にしなくてよい点も大きなメリットにあげられます。

クラウドサービスへの移行で注意すべき点

ここまで解説した通り、クラウドサービスにはさまざまなメリットがあります。一方でクラウドのメリットを生かして導入する上では、注意すべき点がいくつかあります。ここでは主なポイントを6つ取り上げ、解説していきます。

料金体系や契約期間を必ず確認

クラウドサービスへ移行する際は、料金体系や契約期間のチェックが欠かせません。利用料金は人数や機能によって変わることが多いですから、「クラウドサービスだから安い」とは限りません。そのため、現行のシステムと比べてコストアップにならないか確認する必要があります。

また契約期間も確認しておきましょう。システムの更新はある程度の期間をもって進められるため、1年程度であれば問題ないことが多いですが、長すぎる場合は再検討が必要です。

機能の見直しや業務改革を行うことをおすすめ

クラウドサービスは「事前にあらかじめ必要な機能が作り込まれている」サービスです。そのため、今使っているシステムが持つ機能や使い勝手のまま、新しいシステムに置き換えることはなかなか難しいものです。

そのためシステム更新を契機に機能の棚卸しを行い、業務システムに必要な機能の見直しを行うことをおすすめします。クラウドサービスをスムーズに導入するには、システムを業務に合わせるのではなく、業務をシステムに合わせる発想が必要です。また頻度の低い業務は、あえてシステム化しないことも選択の1つです。

同時に業務改革を行うと、効果もあがるでしょう。もっとも業務改革は、経営層が先頭に立って進める必要があることに留意が必要です。

アドオンなどを増やしすぎると、かえって高くつく場合もある

業務の見直しをせずに「現行通り」にこだわるリスクは、料金の面にもあらわれます。そもそもクラウドサービスが安価となる理由は、プログラムを個々の企業ごとにつくらず、共通化しているためです。

もしクラウドサービスで「現行通り」の業務にこだわるならば、アドオンなどを大量につくることとなります。この場合は開発費用が膨大となり、かえってオーダーメイド型サービスで作り上げたほうが安くつくかもしれません。

システム移行の支援メニューが充実しているか

クラウドサービスを導入する際にも、システム移行は必要です。オーダーメイド型システムではこのようなサービスがセットされていますが、クラウドサービスでは標準サービスについているとは限りません。システム移行を自分たちだけで行うことは不安に感じる場合も多いと思いますので、支援メニューが充実している企業に相談することがおすすめです。

ROITではシステム移行にあたり、トライアル環境の構築や各種マスタサンプルの設定、問い合わせ対応などの支援メニューを用意しています。このため、安心してクラウドサービスへ切り替えることが可能です。

本稼働後のサポートレベルについて

クラウドサービスのサポートレベルは、現状お使いのオーダーメイド型システムと異なる場合が多いです。加えてサポートレベルは、サービス運営事業者があらかじめ設定したメニューから選ぶ形式であり、サポートが手厚いとそれだけ月額のランニングコストも上昇します。

このため希望するサポートが提供されるかどうかはもちろん、費用対効果も含めた検討も必要です。

現場の負担を軽減する機能改善を取り入れる

システム更新において、現場の関心は「今よりも使いやすくなるか」という点にあります。このためクラウドサービスへ変更する際には、現場の負担を軽減する機能改善が含まれるサービスを選ぶことが求められます。

上記にあげる配慮を行うことで、現場の理解を得てシステム導入に積極的になっていただくことが可能です。これにより、システム更新がスムーズに進みやすくなることが期待できます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?ここまで、オーダーメイド型システムからクラウドサービスへ変える際のメリットと注意点を解説してきました。

クラウドサービスはその特徴を押さえた上で導入することにより、低コストで高品質なサービスを受けられます。一方で効果をあげるためには「現行通り」にこだわらず、業務の見直しを行うことも欠かせません。したがって導入にあたっては「システムが寿命だから変える」という消極的な姿勢ではなく、「システム更新で業績アップに貢献する」といった積極的な姿勢が求められます。

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