ドローン

農業へのドローン活用方法

ドローンはさまざまな分野で注目を集めていますが、農業への活用も積極的に進められています。天候に左右されるという面はあるものの、広い面積を縦横無尽に飛び回れるドローンは、農業での利用に適しているといえるでしょう。実際に、さまざまな事業者が農業用ドローンを発売し、またドローンを活用したサービスを始めています。
今回は、ドローンが農業でどのように活用できるかという点について解説します。さまざまなドローンの活用方法があることに、気づいていただけると思います。

農業の抱える課題

農業においては、さまざまな課題があります。ここではドローンの活用に関わる課題について、どのようなものがあるか解説していきます。

経営の大規模化により、効率化が求められる

近年の農業では、経営の大規模化が進んでいます。農林水産省の「平成30年農業構造動態調査」では、以下の結果が出ています。

  • 10ha以上を持つ事業者は、耕地面積全体の52.7%(平成25年は44.5%)
  • 5ha以上を持つ事業者は、耕地面積全体の63.8%(平成25年は54.8%)

経営規模が大きくなると収量が増えますが、そのぶん管理の手間も増えます。一方で農地が倍になっても人員が倍増とはならず、逆にコストダウンを求められる場合も多いです。このため、農地の管理にも効率化が求められます。

品質管理が求められる一方、品質や収量は天候に大きく左右される

近年の農業では、生育時の品質管理も求められるようになりました。このため、生育状況をWebサイトなどで公開する事業所も多いです。またQRコードを使って、生産履歴を確認するしくみを整えている事業所やブランドもあります。

一方で植物工場を除き、農業は日照や気温、降水量といった天候に大きく左右されます。このため農産物の品質や収量も、年により大きく変わります。

高齢化と、若い就農希望者の意識の変化

農業の従事者数は減り続ける一方、平均年齢は高止まりとなっています。農林水産省の公表データによると、平成22年の農業従事者数は260万人以上だったものが、平成30年には175万人に減少しています。平均年齢は66歳前後、65歳以上の高齢者は全体の3分の2を占めています。

一方で平成30年の新規就農者については、以下の通り報告されています。

  • 全体の新規就農者は55.7万人、うち自営就農者が41.5万人、雇用就農者が10.5万人
  • 49歳以下の新規就農者は20.8万人、うち自営就農者が10.1万人、雇用就農者が8.0万人

49歳以下の若い就農希望者は、農業法人などに雇用されて働くことを選ぶ傾向がうかがえます。これは農業法人なら給与が支払われるため、安定した生活基盤が築ける点が支持されていると考えられます。

農業法人に就職する人が増えれば、必然的にその規模も大きくなります。このため、ドローンが活躍できる農地の増加も期待できます。

農業におけるドローンの活用方法

農業では、さまざまな形でドローンを活用することができます。農業用ドローンといえば、農薬散布を連想するかたも多いと思いますが、それだけではありません。ここでは主な4つの活用方法をとりあげ、解説していきます。

農薬や肥料の散布

ドローンに農薬や肥料を入れたタンクを搭載することで、上空から農薬や肥料をまくことができます。人が直接散布する必要がないため健康を害するリスクが下がり、かつスピーディーに作業を行うことができます。ドローンは上空2mなど地上に近い場所を飛ぶため、ピンポイントに散布できる点もメリットにあげられます。

特に農地が以下のような場合に、ドローンによる散布が適しています。

  • 山間部の農家など、農地が飛び飛びの場合
  • 多くの種類の作物を栽培している場合

ドローンは1回に10分程度しか飛行できません。このため1回で散布できる面積は1ha程度となります。一方で人が動力噴霧機で1ha分の農薬を散布すると、3時間程度が必要です。従ってドローンを活用することにより、労力と時間を大幅に減らすことができます。

作物の生育状況をチェックする

多くのドローンには人の目に見える可視光線だけでなく、赤外線なども認識できるカメラが搭載されています。このカメラを利用して作物の生育状況をチェックし、肥料を与える時期の検討やいつ収穫すべきかなど、ほ場の管理に役立てることができます。この方法は、精密農業やリモートセンシングとも呼ばれています。

種まき

水稲栽培ではドローンを利用し、上空から直接種をまく試みが行われています。ドローンを利用することで効率よく、かつ均一に種をまくことができます。ドローンでの種まきには、鉄でコーティングされた専用の種が使われます。
JA広島中央では2017年からこの検証を実施しており、種を均一にまくことが可能という結果が出ています。

鳥獣害対策

ドローンは鳥獣による農作物の被害を防ぐ用途でも活用が期待され、神奈川県など一部で実証実験が始まっています。実際に検討されている内容は、以下の通り多岐にわたります。

  • 鳥獣を発見したり、嫌がる音などを出して追い払う
  • 鳥獣が来ないように巡回をする
  • 農作物の食い荒らし跡や、土の掘り起し跡の状況など、被害状況を確認する
  • けもの道の状況など、動物の生態を調べる

用途ごとに求められる機能

農業用ドローンに求められる機能は、農薬散布用と精密農業用では異なります。ここではそれぞれに求められる機能について、解説していきます。

農薬や肥料散布用のドローン

農薬や肥料散布用のドローンでは、以下のものが本体に装備されている必要があります。

  • 農薬や肥料を入れるタンク
  • 散布するためのポンプとノズル

ドローンで散布できる農薬や肥料は液状のものが多いですが、粒状のものを散布できるドローンもあります。この場合は、粒剤散布装置が必要となります。

精密農業用ドローン

精密農業用ドローンでは、農作物の生育状況をチェックできる機能が必須です。このため、カメラやセンサーが欠かせません。カメラは主に、可視光線(赤、青、緑)と近赤外線、レッドエッジをあわせて観測することのできるものが搭載されます。またセンサーには、日光センサーなどがあります。

ドローンを使うメリット

ドローンを使うメリットには、さまざまなものがあります。本記事の最後では3点のメリットを取り上げ、解説していきます。

ヘリコプターよりも安価、かつ狭い範囲での散布も可能

これまで農薬散布などに使われているヘリコプターの価格は、1,000万円前後、またはそれ以上と高価です。一方で農業用ドローンは、200万円や300万円から購入できる製品もあります。ドローンはバッテリーで駆動する機種が多いため、燃料を用意しなくてよい点もメリットです。

一方でドローンはヘリコプターよりも小回りが利き、農作物から2m上空という低い高度を飛ぶことができます。これにより4m程度の狭い幅でも、農薬や肥料を散布することができます。

少人数で広範囲のほ場を管理できる

人間が歩くスピードは、一般的に時速4kmといわれています。作物を個々にチェックして回るとさらに遅くなりますから、1人が1日でまわれる面積は限られます。このため、ある程度の人数で手分けして行わなければなりません。

一方でドローンならば人よりも速いスピードで飛び、上空からカメラで見ることができます。これにより、同時に複数の作物の生育状況を同時にチェックできる点もメリットとなります。

またドローンは上空からチェックするため、ほ場に足を踏み込むことがありません。このため人が毎回立ち入る必要がなくなり、ドローンの操縦者と補助者の2人だけで広範囲のほ場を管理することが可能です。また、土が踏み固められることによる悪影響も防げます。

経験や勘に頼らず、データに基づいた対応ができる

ドローンはほ場をカメラでチェックした結果を、データで送信します。天候など他のデータと組み合わせて解析することで、自分自身や先輩の経験や勘に頼れない場面でも適切な対応が行えます。

たとえば葉緑素の量を推定するNDVI(正規化植生指数)は赤と近赤外線の反射率を比較して、生育状況をチェックする指標です。計算に必要なデータは、精密農業用ドローンを使えば簡単に収集できます。

また、収集したデータを解析するシステムも実用化されています。近年は気象条件が激変することも多いため、経験だけでは対応できない場面もあるかもしれません。このようなケースでも、データを解析して対応することは有効な手段の1つです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?ドローンは農業においても、農薬や肥料の散布、生育状況の管理など、さまざまな用途に役立てることができます。これにより農業従事者の労力を軽減することはもちろん、高品質の農作物を出荷することで高収入につなげることも可能です。

ドローンの活用は自分自身で行うことも可能ですが、飛行方法の習得や監督官庁への飛行許可の取得など、行うべきことは多いです。このため、ドローン専門業者に依頼するとより安全、かつ確実な活用ができます。データの解析もセットで提供する事業者もありますから、ある程度の広さの農地を持つかたは、これらの専門業者が提供するサービスの利用もご検討ください。

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